曖昧さ回避

怪我で済んだわ

誰の葬式にも呼ばれない

わたしは地元に友達がふたりしかいない。

そのうえその片方は幼なじみにカウントするので実際はひとりだけ。そのたったひとりの友達と半年ぶりに会った。その前は2年半ぶりとかだったと思う。わたしが乗った電車に次の次の駅から乗ってくるという待ち合わせをして、植物園に行き、また電車で今度はおなじ駅までもどり、1時間半くらい遠回りででたらめに歩いて家に帰った。植物園に行こうと言ったのはわたしだったけど、実際は遠回りに歩いていた時間のほうが楽しかった。「……っておぼえてる?」「聞いたことある名前な気するからおなじクラスやったことあるかもしらん」そのおなじクラスやったことあるかもしらんちょっと不良そうな(記憶の)同級生は、友達と小学校がおなじで、誕生日も生まれた病院もおなじで、昔はよく遊んだけど中学に入ってから疎遠になった、という話だった。隣を歩く友達とその同級生はタイプが違いすぎて、あんまり想像がつかなかった。そもそも同級生とかとタイプが分化して、つきあいがなかったことになるようなのは大抵中学校でよくあることだな。ていうかなんでそんな話をきゅうにするんだと思ったけど、そういえばこの人はいつもそうだと思いうんうんと話を聞く。「春先に事故で亡くなって、葬式行ったわ」

顔もおぼろげな、おなじクラスやったことあるかもしらん同級生。たぶんこんな話聞かなければ一生思い出さなかった同級生。ほとんど存在しないのとおなじで、死んでからたまたま思い出したけど、もう死んでいる。いないんだ。死んだから、思い出したようなものなのに。

そのあとで、3年前にもうひとり同級生が亡くなっているという話を聞いた。その人のことは覚えていた。偶然まだ死んでいないあたしたちは、そのあとスーパーとドラッグストアが一緒くたになったみたいなお店でアイスを買って、歩きながら食べた。

 

そもそも冒頭に戻るけど友達がほとんどいないので、誰が死んでもきっと連絡など来ないし、誰の葬式にも呼ばれないんだろうな、と思っている。なんだかすこし感傷的になっちゃって、そのあとからずっとちょっとだけ寂しい