曖昧さ回避

怪我で済んだわ

エレノア

高校2年生のときその教室が閉じるまで、わたしは英会話教室に通っていた。引越しを機にその教室に変えたので、だいたい年長さんの頃から16まで通った。塾も併設している教室であり、中学時代などは週4ほど通った。学校、家、その次に長い時間だった。

 

エレノア。

エレノアというのはその英会話の先生である。もちろん仮名だが、わたしたち生徒はその先生のことをエレノアと名前で呼ぶことが普通だった。エレノアがそう呼ばせたので。それは保護者もおんなじで、わたしの母も父も、エレノアのことはエレノアと呼んだ。なんならエレノアの夫、塾長のことも名前で呼んでいた。親よりも歳上の、というか先生を呼び捨てである。しかしアルバイトの講師はえいいちくんとかはるおみくんとか、敬称をつけていた。いかにも個人経営であった。えいいちくんが就職するとき、みんなで送別会をやり、塾長はえらく張り切ってピザとかデリバリーしていた。塾とは

エレノアのことを書こうと思ったのにひどく脱線してしまう。エレノアはドのつくポジティブで、むちゃくちゃ関西弁にしっかりなまっている金髪碧眼のアメリカ人だった。初めて日本に来たときは「ありがとう」「空手チョップ」「烏丸なんとか(下りるバス停)」というみっつの日本語しかわからなかったエレノア。あるときワークに「外国人の友達はいるか?」という質問が出た。ワークはそういう質問をみんなでしあうようなのが主で、おる?とかおらんなあとか言い合う張り合いのない展開になった。いまにもNoと答え合いそうなわたしたちに向かって、エレノアがでかい声で言った。

「エレノアがおるや〜ん!」

エレノアは先生カウントやろ。友達なんか。動揺する生徒たちをよそにエレノア本人は、わたしたちの友達であることを押し通してきたので、結局全員Yesと答えることになった。その日からわたしはエレノアの友達であるが、実際は初めて会ったときから友達だったのかもしれない。ピザデリバリーするやばい塾長の話はまた今度ね

 

エレノアはナードマグネット「いとしのエレノア」より拝借、えいいちくんとはるおみくんは大瀧詠一細野晴臣です(わかるか)。